サッカーのアメリカナイズはどこまで? 政治介入許したFIFAにも批判の声

サッカーのワールドカップ(W杯)北中米大会で、アルゼンチン代表対スペイン代表がぶつかり合った決勝戦は7月19日(米時間)、スペインの勝利で終わった。しかし、スポーツの精神と相容れない「事件」が大会期間中、相次いだ。トランプ米大統領は、米国代表チーム選手に対して出されたレッドカードについて、国際サッカー連盟(FIFA)に圧力を掛け、異例の介入をした。さらに決勝戦の大会初のハーフタイムショーは「サッカーのアメリカ化」(英ガーディアン)との批判が上がった。

ロイター通信は「米国流への変革、サッカーは『魂』をかけた戦いに直面」との総括記事を配信。「2026年W杯は、最終的に『どのチームが優勝したか』よりも、ある重要な問いをサッカー界に残した大会として記憶されるかもしれない。その問いとは、大会が北米を去った後も、サッカーの『米国流』への変革はどの程度定着し続けるか、という点だ」と、将来を見据える。

大会初として導入された「ハイドレーション・ブレーク(給水タイム)」は、放映権を得ていたテレビ局FOXが2億5千万㌦もの収入を得ることが分かっている。ロイターは、これについて試合が4分割されたような措置が、今後重要な議論に結び付くと指摘する。選手の健康保護という明確な存続理由がFIFAにはあり、そしてハーフ途中の一定の中断が持つ商業的可能性を、サッカー界の意思決定者たちが無視し難いからだ。

とはいえ、これを世界的に標準化しようとすれば反発を招くことは必至である。特に欧州では、試合が頻繁に中断されないという点が、サポーターが最も強く守ろうとするサッカーの特徴の一つだからだ。実際、UEFA(欧州サッカー連盟)は「水分補給のための休憩時間を1分以内とする規定を曲げるつもりはない」と明言している。

豪華なハーフタイムショーが物議

また、決勝戦前の音楽パフォーマンスとハーフタイムショーも賛否両論を呼んだ。決勝戦そのものが、1カ月もの間トーナメントを見守った全世界のファンにとって最大のイベントであるべきだ。しかし、今大会の決勝戦は、試合前にラッパーのスウェイ・リーやポスト・マローンが登場。歌姫ジェニファー・ハドソンが米国歌を歌った。サッカー(フットボール)発祥の国である英国のBBCやITVはほとんど放送しなかったという。「視聴者はショーより試合を見たい」と判断した(英BBCによる)。

ハーフタイムショーは、マドンナに始まり、BTS、シャキーラ、ジャスティン・ビーバーと大御所アーティストが登場。会場がニューヨーク・ニュージャージー・スタジアムだったため、ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団とその音楽監督・指揮者でベネズエラ出身のグスタボ・ドゥダメル、セサミストリートなどに登場するマペット(操り人形)と、ニューヨークの顔がそろった。ビーバーのバラード以外は、テンポが非常に速く、目まぐるしい演出だった。

英ガーディアンは「成功も失敗も、そしてマペットも、誰も望んでいなかった豪華ハーフタイムショー」という記事で、ショーを振り返った。筆者アレクシス・ペトリディス記者は「FIFAはついに、アメリカン・フットボールを真似たハーフタイムショーをW杯決勝に持ち込んだ」「サッカーのアメリカ化」と指摘する。1人ですらファンが熱狂する豪華出演者を何人も起用し、人気が「米四大スポーツ(アメリカン・フットボール、野球、バスケットボール、アイスホッケー)」に劣るサッカーを、ハーフタイムで楽しいものとして米国で印象付けようとした。

英BBCによると、BBCで解説をしていた元イングランド代表選手ウェイン・ルーニーは「出演したアーティストはみんな好きだ。でも最高の瞬間はショーが終わった瞬間だった。とにかく酷かった(クソみたいだった)」と感想を述べた。私も試合の緊張感が途切れたような印象を持った。

国際サッカー評議会が定めるハーフタイムは15分を超えてはならない、とするが、ショーは30分近く続いた。これに対し、「15分を超えると、選手の体が冷えて後半戦で負傷につながる恐れがある」と複数の米メディアが伝えた。

ガーディアンの記事は反対するばかりではなく、ショー自体は「意外と楽しめた」と指摘。一方で、「ショーが必要だったかは疑問」と締めくくった。私も同じ感想だ。久しぶりにマドンナをライブで見て、米国に今年1月、武力攻撃を仕掛けられたベネズエラの指揮者がニューヨーク・フィルや少年少女の合唱を率いる。世界中に愛される歌姫シャキーラが踊りまくる。最後のメッセージ「LOVE」には、正直感動したし、会場内の歓声もマックスになった。この規模のエンターテインメントは、アメフトのスーパーボウルのハーフタイム以外にはない。しかし一方で、ハーフタイムが長いなと感じた。さらに、後半戦が残っているというのに、見たところ数百人にも及ぶパフォーマーがピッチで踊りまくったこともやや気になった。

トランプ政治に踏みにじられたW杯

トロフィーとメダル授与式では、優勝国スペインの国家元首でもないトランプ米大統領がステージに登場した。FIFAが仕組まなければあり得ないことだが、スタジアムはトランプ氏に対するブーイングに包まれた。これはFIFAが非難されていい失態だった。優勝チームに対する称賛とリスペクトがクライマックスに達するべき瞬間に、政治的な思想の分断によるブーイングが起きた。スペイン代表のためにも残念だ。選手らが歓喜のポーズを報道陣に見せようとしていた際、トランプ氏がキャプテンに握手を求めようとしたりしたため、ジャンニ・インファンティノFIFA会長がステージ脇に導く姿も見られた。スポーツの公平性を保つため、政治的な介入は避けるべきという「政治とスポーツの分離」は、トロフィー授与式においてまで、踏みにじられた。

授与式に先立つ最初の政治的介入はレッドカード問題だ。トランプ氏は7月6日、米国代表のフォラリン・バログン選手に対するレッドカード判定と、それに伴う1試合の出場停止処分をめぐり、インファンティノ会長に個人的に決定の見直しを求めたことを記者団に明らかにした。

米ニューヨーク・タイムズは、レッドカード問題をW杯の「最大の危機の一つ」と書いた。「アメリカ化」もサッカー界に影を落とした。北中米大会は、純粋なスポーツの祭典ではなかったという印象が残っている。

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