地方都市で存在感増す デジタルニュースサイト
米国の地方都市では日本と同様、最大規模の編集部を持つのは、地元新聞社となっている。しかし、新聞社が発行部数減少、広告収入の低迷に苦しむ中、新興のデジタルオンリーのニュースサイトが、新聞社の規模をしのぎ始めている。
この中には、地元の新聞社、ラジオ・テレビ局よりも多くのデジタルアクセスを集め、発行部数や視聴者数をはるかに超えるところもあり、ローカルニュースの中心にさえなっている。これらのデータはデジタル・ジャーナリズムの米調査機関ニーマン・ジャーナリズム・ラボ(以下ニーマン)がまとめた。
ニーマンは、この「デジタル・ローカルニュースサイト」の成功に注目し、新たに「営利型・デジタルネイティブ地方ニュースサイト」のアクセスランキングに関する調査を開始した。既存のものでは、「地方紙」「非営利ニュース」「公共メディア」のランキングがあるが、これが4番目となり、まさに4番目のローカルメディア勢力ともいえる。
新聞の発行部数を超えるサイトも
この分析はあくまでも、新聞の発行部数とオンラインのビジター数を比べたもの。デジタル化で成功した米ニューヨーク・タイムズの発行部数が直近で60万弱、デジタル購読者数が約1200万人であり、デジタルアクセスの読者に対する圧倒的なリーチ度はすでに証明されている。地方ニュースでも、地方新聞の発行部数を超える月間ビジター数がある営利型ニュースサイトの存在感は、無視できなくなってきたと言える。
以下は、今年3月のデータでまとめたトップ10。
1、「タピント・ネット」(ニュージャージー州ニュー・プロビデンス、月間ビジター数約124万)
2、「マディーリバーニューズ・コム」(イリノイ州クインシー、同85万)
3、「オイルシティ・ニューズ」(ワイオミング州キャスパー、71万)
4、「ラフドラフトアトランタ・コム」(ジョージア州アトランタ、70万)
5、「ロストコーストアウトポスト・コム」(カリフォルニア州ユーレカ、67万)
6、「ボイジーデブ・コム」(アイダホ州ボイジー、50万)
7、「エドハット・コム」(カリフォルニア州サンタバーバラ、40万)
8、「リッチランドソース・コム」(オハイオ州マンスフィールド、40万)
9、「グレーターロングアイランド・コム」(ニューヨーク州ウェストアイスリップ、39万)
10、「シャーロットレジャー・サブスタック・コム」(ノースカロライナ州シャーロット、36万)
注目に値するアクセス数
例えば、ニューヨークに次ぐ米第2の大都市であるカリフォルニア州ロサンゼルスの有力紙、ロサンゼルス・タイムズは、発行部数は2025年時点で6万5千部、デジタル購読者は数十万人、月間ビジターは約4千万(米複数メディアによる)。大都市ではデジタルでも優位な地位にあることが数字では明らかだ。しかし、トップ10のニュースサイトは、いずれも大都市ではないローカルの市、町、エリアを対象にしており、月間数十万のアクセスがあるのは注目に値する。
2位にランクインした「マディーリバーニューズ」は、人口わずか3万9千人の中西部イリノイ州クインシーにあり、85万の月間ビジターがある。2021年に、地元テレビ局EN_SPACEWGEMのニュースディレクターだったボブ・ゴフ氏が創設した。現在のスタッフは、フルタイム7人に加え、数人のパートタイムで運営と編集部はかなり小規模だ。
しかし、米調査会社シミラーウェブの推計によると、月間ビジター数で比べれば、1835年創刊の地元紙クインシー・ヘラルド・ウィグの6・5倍に達したという。26年3月のビジター数85万8624は、テネシー州第2の都市メンフィス、バージニア州の州都リッチモンド、アイダホ州の州都ボイジーなどにある米各地の中堅日刊紙を上回る規模だった。
3位の「オイルシティ・ニューズ」は、ワイオミング州の州都キャスパー(人口6万人)が拠点で、州内最大級のウェブサイトの一つとなっている。月間ページビューは200万に達するとされる。昨年には紙にも進出し、12㌻の「オイルシティ・ウィークリー」を創刊した。前出のシミラーウェブによると、ビジター数は、地元最大の日刊紙キャスパー・スター・トリビューンの9倍以上だった。
トップのタピントは、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州、フロリダ州にまたがる100以上の地域・郊外ニュースサイトのネットワーク。tapinto.netというドメイン上で配信され、アクセス数は合算されている。
ただし、それぞれの地方サイトは地元の編集者・発行人にフランチャイズされ、独自に運営されている。加盟するサイトは、初期費用として5千㌦を支払い、さらに年間約8千㌦とサイト収入の10%をタピントに納めるビジネスモデルだ。こうした仕組みを使って、地方ニュースのテコ入れができるという例でもある。
トップ10に入らない媒体もあるものの、地元新聞社に匹敵するか、あるいはそれを上回るアクセス数があるのが、以下の4社。「リッチランド・ソース」(オハイオ州)、「ボイジーデブ」(前出、アイダホ州)、「ジ・アセンブリー」(ノースカロライナ州)、「ルックアウト・サンタクルーズ」(カリフォルニア州)。
資金面の拡充を
ニーマンのランキング対象となる条件は、地方独立系オンラインニュース団体ライオン・パブリッシャーズ(223の営利メディアと218の非営利メディアが加盟)の会員であること。ニーマンはこれまで、地方紙、非営利ニュースサイト、公共ラジオなど、「公共性の高い権利を監視する報道」を志向するメディアに注目してきたという。
一方、デジタルニュースサイトへの投資資金は、ポリティコ、アクシオスなど全国規模メディア・ベンチャーに集中する傾向があったとする。しかし、営利型、非営利型を問わずデジタルネイティブ地方ニュースサイトにも投資資金が流通するべきだとしている。