中国では、伝統メディア離れが深刻になっており、新聞の休刊やテレビチャンネルの削減が常態化している逆風の中で、小・中学生を対象とした「少年報」というジャンルの新聞の創刊ブームが湧き起こっており、注目を集めている。

このブームは昨年下半期から静かに形成され、今年も引き続き熱を帯びている。報じられた情報をまとめてみると、次の通りである。

昨年9月、山東省の済南日報報業集団(グループ)傘下の「都市女報」が「時代少年報」に名称変更。都市に住む女性に的を絞っていた週報から、全国の8歳から14歳の少年少女を対象とした教養教育読物へと転換した。10月、河南ラジオテレビ局傘下の「東方今報」も「陽光大少年」に名称変更。地方総合都市日報から、週刊の「陽光少年報」の中学年版へと変わった。11月、新華報業メディア集団(江蘇省)傘下の「揚子体育報」も「新華少年報」に名称変更。スポーツ分野に深く根差していた新聞から、青少年向けの時事ニュースや科学の普及を主な内容とする新聞へと転換した。12月、河南省の鄭州日報社傘下の通勤者向けの「中原地下鉄報」から名称変更した「鄭州少年報」が正式に創刊した。

今年に入ってからも1月、東莞日報社(広東省)傘下の「東莞時報」が「莞邑少年報」に名称を変更し、少年少女専用の読物へと転じた。7月には江西日報社傘下の1984年に創刊、経済・生活情報を中心とした中国初の「信息日報」から名称変更した「紅星少年報」が正式に創刊した。

なぜこうした都市向けの新聞が「少年報」に変身したのか? 背景には、市場、政策、および模範的な先例の効果という複数の影響要因が挙げられる。

市場の視点からみると、広告収入依存の都市新聞のビジネスモデルが崩壊する中、小中高生向けのメディア市場の独特の優位性があることは魅力的だ。まず、メディア利用者の規模が大きい。今年2月の国家統計局の発表によると、2025年、全国の小中高校の在校生総数は約1・86億人となる。また、保護者は子どもへの教育投資を惜しまない。

中国インターネット情報センターの調査では、25年6月時点で6歳から19歳のネットユーザー規模はすでに約2・09億人に達し、課外娯楽の8割が動画視聴、ゲーム、SNSに集中している。こうした状況を心配している保護者が多い。保護者にとって、ネット情報と比べ、新聞は厳格な審査を経ており、正確で安全だ。さらに、学校側はスマートフォンの持ち込みを原則禁止しつつ、紙媒体の購読を推奨している。

政策面では、2021年7月の「双減」政策(義務教育段階の学業負担と校外トレーニング負担の軽減)実施後、小中学生の放課後の読書時間が増加し、優れたコンテンツの需要が拡大した。また、教育部が強調する青少年のメディアリテラシー教育により、「少年報」が担い手となり、家庭教育の理念が「知識の注入」から「素養の育成」へと転換したことも、品質の高い教育的な読物への需要を生み出している。

成功例としての「陽光少年報」

「少年報」ブームを巡る議論の中で、「陽光少年報」はよく言及され、その成功が模範的効果を発揮したと指摘される。

河南ラジオテレビ局傘下の「陽光少年報」は2016年6月1日に正式に創刊した。当時、経営難に陥っていた「東方今報」(河南テレビ局が管轄する)が小学生向けに時事問題を扱ったニュース紙として試みたものだ。24年当時の社長の黄寧氏と総編集長の趙洪涛氏がメディア専門誌の「中国記者」に寄稿した記事によると、この新聞の狙いは、ニュースを通じて子どもたちが国と世界を知り、学んだ基礎知識を現実世界と結び付け、素養を高めることだという。小学生が読めて好きになれる新聞を作るため、内容や印刷に力を入れたが、創刊初期は発行部数が少なく、存続危機が常に付きまとった。3年間は財務状況が悪く、人材流失さえ生じた。活路を開くため、19年から前例のない試み─新聞の発行を電子商取引(EC)で行うことに踏み切った。

新聞のEC化販売は、紙媒体の新聞を普通の商品と同様にネットで売り、EC物流システムで配達するというものだ。販売において、「陽光少年報」は「抖音」(TikTok)、「小紅書」(RED)、WeChat動画チャンネルなどのプラットフォームで、ライブ配信によるマーケティング戦略を採った。また、WeChatのグループチャットを通じて読者コミュニティーを構築し、継続的なアフターサービスを提供することで、高いリピート購入率を実現した。

「陽光少年報」は週刊紙で年間42号刊行。購読者にとって、42回の個別配達は配送料の負担が重い。配送コストを削減するため、柔軟な配達組み合わせプランを設計した。毎週1回、1部ずつ配達する「週投」、毎月1回、1カ月分をまとめて配達する「月投」、同じ住所に毎週複数部ずつ配達する「複数人共同購入」という方法で顧客のニーズに応えている。

さらに、出荷効率の向上、コストの削減などを図るため、新聞社は自ら倉庫仕分けシステムを構築し、仕分け・包装・ラベル貼り付けを行っている。こうしたEC新聞販売モデルが功を奏し、22年末には発行部数100万部を突破、25年2月には200万部、同年末には230万部に達した。

多くのメディアがコンテンツをネットやSNSプラットフォームで発信することに取り組む中、「陽光少年報」が紙の新聞を堅持しつつ、販売方法としてネット時代のECモデルを全面的に採用したことは最もユニークだ。

「陽光少年報」の成功を受けて、かつての母体であった「東方今報」は「陽光少年報」の中学生版「陽光大少年」へと全面的に変更した。

ただし、ブームの裏には課題もある。現在、全国で名称に「少年」を含む新聞を発行するのは30社以上。多くが「時事ニュース+科学普及+素養教育」を目的とした内容の似た構成を採っており、コンテンツの同質化が進んでいる。中国少年児童報刊工作者協会の段艶文氏は、「新創刊の『少年報』は当初から根本的なポジショニングを明確にし、同質化競争や盲目的な追随の罠に陥らないよう、時代の潮流と成長の法則という二つの座標軸を踏まえ、代替できない独自性を築くべきだ」と指摘する。

中国の少年報ブームが、一時的な風物詩に終わるのか、新たなメディア形態として定着するのか、今後2、3年が正念場となろう。

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