オーディオブックなど市場規模拡大 読書のデジタル化進む中国
4月23日は国連教育科学文化機関(UNESCO)が制定した「世界図書・著作権デー」である。中国では毎年この日に読書促進活動が行われるが、今年は変化が起きた。2月から施行された「全国読書促進条例」に基づき、毎年4月の第4週が「全国読書活動週間」に設定されたため、今年4月20日から26日までは初の読書週間となり、全国各地で多様な読書促進キャンペーンが展開された。
国家レベルのイベントでは「第5回全国読書大会」が江西省南昌市で開催され注目を集めた。大会に合わせ「デジタル読書論壇」などの複数のフォーラムが開催され、中国新聞出版研究院、中国オーディオビデオ・デジタル出版協会(CADPA)などの機関が「第23回全国国民読書調査」「2025年度中国デジタル読書報告」「2025年中国音声読書発展報告」などの調査報告を発表した。そこから、デジタル時代ならではの読書実態とデジタル読書産業の最新動向をうかがうことができた。
デジタル化読書が深く浸透
中国新聞出版研究院は1999年から国民読書調査を行っている。第23回調査は、25年10月から26年2月にかけて、195都市を対象としたサンプル調査が行われた。
この調査結果によると、25年の成人の総合読書率(紙の書籍と電子書籍を含む)は82・3%、24年より0・2㌽上昇、1人当たりの読書量は8・39冊で、24年の8・31冊を上回った。ただし、デジタル化されたスタイル(PC、スマートフォン、電子ブックリーダー、タブレット、オーディオブックなど)の接触率は80・8%に達し、紙のメディア(書籍60%、新聞21・2%、雑誌16・6%)を大きく上回った。
また、各読書スタイルの接触時間を見れば、1人当たり1日平均、スマートフォンは109・54分、PCは62・42分、電子ブックリーダーは9・67分、タブレットは9・45分であった。一方、書籍は24・68分、新聞は3・83分、雑誌は2・77分であった。
こうしたデータから中国ではデジタル化された読書が日常生活に深く浸透していることは明らかだ。国民読書スタイルの変貌を背景に、読書市場も大きく変化している。
4月20日に開催された「デジタル読書論壇」において、CADPAは「2025年度中国デジタル読書報告」を発表した。この報告によれば、25年の全国デジタル読書ユーザー規模は6・89億人に達し、前年比2・95%増加、ネットユーザー全体に占める割合は61・24%となった。デジタル読書市場の総売上高は789・37億元で、前年比19・35%増加と、勢いが衰えない成長ぶりだ。
デジタル読書市場は、大衆読書(ネット文学、電子書籍など)、音声読書(オーディオブック、オーディオドラマなど)、専門読書(学術雑誌・データベース、デジタル教材など)の3分野から構成される。それぞれの売上高は594・76億元、134・35億元、60・26億元で、前年比それぞれ21・67%、8・61%、23・35%増加した。
25年末時点の中国のデジタル読書作品の総数は前年末比11・87%増の7055・92万部で、コンテンツの供給が活発だったことが示された。翻訳、海外オリジナル、電子書籍などさまざまな形で海外に輸出された作品は前年比17・42%増の94・92万部だった。北米と東南アジアが最大の海外市場として並び、欧州市場の比重も大きく上昇した。ただ、産業成長と同時に、コンテンツの同質化、著作権紛争の頻発といった課題に直面していると、同報告は指摘した。
「音声読書」ユーザーは6億人超え
デジタル技術の応用と5G通信システムの普及した現在、デジタル読書は時空の制約を打破し、いつでもどこでも読書が可能となった。近年最も注目を集めているのは、耳で「読書」することである。通勤、家事、運動などの場面で、耳で曲や音楽を聴くように、本やニュースを聴くことは日常的になっている。AI音声合成技術を利用してテキスト原稿を迅速に音声に変換することができるため、中国では、「ワンタッチでニュースを聴く」機能はほとんどのニュースサイトやアプリに備わっている。オーディオブックなどの「音声読書」の普及は出版業のデジタル転換を推進し、「音声読書」の市場規模は絶えず拡大しており、「耳経済」の重要な支えとなっている。
読書大会の前日に開催された「第5回出版融合発展イノベーションフォーラム」で発表された「2025年中国音声読書発展報告」(CADPA)によると、「音声読書」のユーザー規模は6・17億人に達し、デジタル読書ユーザーの約9割を占めている。25年の「音声読書」市場の売上高は134・35億元で、前年比8・61%増加した。
収入構造を見ると、購読収入が46・55億元(構成比34・65%、前年比16・62%減)、著作権収入が22・12億元(構成比16・46%、前年比55・23%増)、広告その他(スマートスピーカー、ソフトウェアサービスなど)の収入が65・68億元(構成比48・89%、前年比22・49%増)となっている。購読収入は明らかに減少した一方、著作権と広告の収入は大幅に拡大した。この変化について、同報告は「業界が従来のサブスクリプションモデルに依存した成長の勢いが弱まったことを示し、音声読書は広告収益化の拡大、IP改編とライセンス運営の深化といった多角的な発展路線への転換を加速している」と分析した。
また、25年末時点で、「音声読書」のコンテンツ総数は約2342・61万作品に達し、前年比14・47%増加した。ユーザーが好む題材の上位1~5位は、文学、人文歴史、科学技術・科学普及、音楽芸術、健康生活であった。うち文学作品と人文歴史は数年にわたり上位2位を維持している。
さらに、25年と21年の「音声読書」利用のデータを比べてみると、「ほぼ毎日」の割合は40・03%、21年(11・4%)より約2・5倍増。ユーザーの1回当たりの利用時間は平均69・29分に達し、21年(32・13分)より倍以上になった。1人当たりの平均読書量は11・2部、21年(7・08部)より4・12部増加した。「音声読書」の利用は、国民の新しい読書習慣となりつつあると言えよう。
ただし、「音声読書」の普及に懸念を示す声も少なくない。便利さの裏で、断片的な情報摂取が深い思索をむしばみかねない。国民一人ひとりに、自らの読書姿勢を見詰め直す覚悟が求められている。