普通の平和学習構築を 「大和魂」に驚いた
アメリカとイランの戦闘が本当に終わるのか。6月18日、終結に向けた覚書が交わされた。「追い込まれ」(16日付毎日朝刊)、「トランプ氏の政治的敗北」(同日付朝日「視点」)とされるが、何回も戦闘終結を公言してきた〝オオカミ少年〟のようなトランプ大統領だけに半信半疑。誕生日にはホワイトハウスで総合格闘技イベントを開催した。彼がやっていることは政治ではなく「商売」と「売名」では?
新聞より雑誌か
高市早苗首相の公設秘書が昨年の自民党総裁選などで他候補の中傷動画作成に関わったと「週刊文春」がキャンペーン報道した問題が、首相の「ぶれる発言」(13日付朝日朝刊)で尾を引いている。テレビでメディア関係者が「高市人気で、SNS(交流サイト)はほとんど盛り上がっていない」と語っていたが、在京紙の報道姿勢にも落差が。社説では東京が6日に「秘書の国会招致必要だ」、毎日も7日に「はぐらかしは通用しない」と指摘した。地方紙は8日付朝刊で共同通信が文春報道の動画作成者にインタビューした記事を載せた。一方、読売と産経は首相の答弁を随時報じたが、扱いは小さく、差はありあり。
雑誌「選択」6月号「高市政権に『沈黙』のテレビ局」は、首相が総務相時代、「停波もあり得る」と強硬だった影響で、民放がいまも政権に忖度(そんたく)していると指摘した。残念ながら、いまやこうした問題の追及は新聞より雑誌に期待するしかないようだ。産経の16日付世論調査でも、「首相の説明が納得できない」が52・0%で、「納得できる」40・2%を上回ったが…。
産経が〝孤軍奮闘〟
衆参両院正副議長は6月8日、皇族数確保についての「立法府の総意」案を各会派代表者に示し、協議の結果、10日に取りまとめて高市首相に伝えた。①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ②旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える─が骨子。各紙の社説は産経以外、内容と論議不足に疑問を呈す姿勢で共通した。
9日の読売が明快。「皇族数確保が目的と言いながら、実際は男系男子による継承の維持に筋道を付け、女性・女系の継承をあらかじめ封じようという意図が透けて見える」。9日はほかに朝日が「養子案には疑問が残る」、東京が「『見切り発車』許されぬ」と主張。11日には毎日が「女性・女系排さず議論を」求め、日経も「安定した皇位継承への国民的議論深めよ」と述べた。対して産経は男系推進と女性・女系阻止が鮮明で、1日「危うい『女性宮家』避けよ」、9日「日本の皇統護る内容だ」、11日「皇統護る結論を歓迎」と連打。「男系継承の伝統確認できた」とした。憲法・安保問題と様相が異なり、産経の〝孤軍奮闘〟が際立った。
高市内閣や保守層が夫婦別姓やLGBTなどでの〝揺り戻し〟を通して目指すのは、家父長制を基盤にした戦前型システムへの回帰だろう。その頂点にあるのが天皇制で、男系男子にこだわるのもそのためだ。そうしたことを抜きにして、「国民の大多数が支持している」のを根拠に天皇制を論じる知識人やメディアの姿勢には疑問がある。そして、もっと疑問なのは、実態がよく分からないまま、ただ天皇や皇室をありがたがっている国民大多数の態度だ。
〝リベラル神話〟
遅まきながらだが、沖縄・辺野古沖転覆死傷事故をめぐる政府の判断は今後、政治的・社会的に大きな影響を及ぼす。文部科学省は5月22日、同志社国際高校の平和学習が「政治的中立を定めた教育基本法に違反する」と認定した。23日社説では産経が「政府の見解と告発は重い」と判断を強く支持。読売も乱用を懸念しながらも、「安全も中立も欠いた平和教育」と、船の運航側と学校側を批判した。対して、学校所在地の京都新聞と沖縄タイムス、琉球新報は安全対策に欠陥があったことを認めつつ、事実認定の内容と政府の政治的中立性判断に疑問を提示。平和教育の萎縮を危惧した。他紙もほぼ同傾向の社説だったが、掲載は朝日が27日、毎日が28日、東京は30日。5月号にも書いたが、都合の悪いテーマで腰が引けていると言われても仕方がないのでは?
朝日と東京の社説には「政治的中立性と安全管理は分けて考えるべきだ」という主張があった。そうだろうか…。今回の事故は、その二つが分けられていなかったから起きたのではないか。私も辺野古に行ったことがある。船には乗らなかったが、基地移設反対派の人に話を聞いた。はっきり言えば、「リベラル」なメディアの人間が反対運動にシンパシーを示すのは普通のことだった。「リベラル」な教育現場も同様だったはず。抗議船も、乗って現場を見るのには便利で経済的だった。
反対派の人たちは、運動に賛同してくれるのを前提に、「船に乗せてやる」「現場を見せてやる」感覚だったと思う。そんな〝なれ合い〟の空気の中に「安全性を確認する」発想が入り込む余地はなかった。私は、文科省の判断は「高市一強」下でなければあり得なかったと思うし、反対運動も平和学習も支持する。しかし、現実に起きた事実を直視したうえで〝リベラル神話〟を見直し、安全確保も含めた普通の平和学習を再構築しなければ、存立自体危うくなると思う。
三つのことに驚いた
最近驚いたことが三つある。一つは時事通信の5月の世論調査結果。4月の自民党大会で制服自衛官が「君が代」を歌ったことを「適切」とした人が42・2%で「不適切」15・6%を圧倒した。二つ目は5月31日付産経世論調査で、「武器を含む防衛装備品の海外輸出」を「進めるべきだ」53・2%が「進めるべきでない」46・8%を上回り、10〜20代では77・8%に達した。
どちらも、依然として内閣支持率が高水準の「サナエ推し」の延長線上かもしれないが、「ここまで来ているのか」と思う半面、「だから、いまのような状況になっているんだ」と納得もした。残り一つはサッカーワールドカップのオランダ戦で引き分けた日本チームに、6月16日付産経が付けた「大和魂」の見出し。そんな時代に新聞批評をやってどうすると思わないわけではないが、考えが理解できない層につながる回路を探さなければと思い直し、書いている。
【訂正】6月号で羽田沖日航機事故とホテルニュージャパン火災の日付を逆にしてしまいました。正しくは火災が1982年2月8日で事故が9日。恥ずかしい。