人間にしかできない「現場取材」「価値判断」追求を 「AI時代の報道」の在り方探る─メディア激動研究所2026春セミナー

一般社団法人・メディア激動研究所は5月30日、「これからのメディア~AI時代の報道~」をテーマに東京都内で2026春セミナーを開催した。

まず、慶応義塾大学大学院法務研究科教授の山本龍彦氏が「AIとメディア」と題して基調講演した。同氏は、人工知能(AI)とアテンションエコノミーが作り出す世界において、ジャーナリズムは①AIのハルシネーション(誤回答)などによる事実の危機②民主主義や基本的人権などの価値が消失・隠蔽(いんぺい)されがちな中での価値の危機③流通の危機─の三つ子の危機に直面していると指摘。その上で、国家と生成AI企業を含むデジタル・プラットフォームが融合すればより強大な権力主体が誕生する危険性があるとして、AIも含めて監視の対象とする必要があると強調した。

続いてメディア激動研究所客員研究員(元毎日新聞論説委員長)の倉重篤郎氏が「高市早苗政権の虚実」と題して時局講演を行った。これらを受けてパネルディスカッションで、昨年朝日新聞社と業務提携したAIスタートアップ、Story Hub(ストーリーハブ)代表取締役CEOの田島将太氏、長崎県立大学国際社会学部教授の華金玲氏、朝日新聞社メディアトランスフォーメーション統括補佐の東岡徹氏、コンテンツジャパン代表の堀鉄彦氏が登壇し、メディア激動研究所の水野泰志代表をコーディネーターに「これからのメディア~AI時代の報道」について意見を交わした。パネルディスカッションの概要を報告する。(発言者敬称は省略)

AIは活用するが、監視の対象


水野泰志氏

水野泰志氏

水野泰志 新聞などでAIという言葉を見ない日はない。報道ジャーナリズムにAIがどのような影響を与えるのか、どう対峙(たいじ)したらいいのかを考えるのが本日の狙いだ。それぞれどんなことを伝えたいか。まず東岡さんから。


東岡徹氏

東岡徹氏

東岡徹 AI時代のジャーナリズムとは何だろうかという点だ。25年3月に朝日新聞の社長、角田克が中央大学で講演し三つの考え方を話した。一つ目がAIを活用する、二つ目がAIを監視する、三番目は記者が取材する、の三つだ。AIを活用するという点では、記者の数は減っていて、一方で仕事はデジタルへの対応などどんどん増えており忙しくなっているが、その負担を軽減できる。SNSに投稿された大量の情報を全部取ってきて分析する。何万ページもの報告書を一気に検索して調べる。このあたりにAIの得意な分野があろうかと思う。

二つ目はAIを監視するという点だ。ジャーナリズムの役割は権力の監視だと思っている。政治家、行政、巨大企業も権力に含まれる。AIが人間の知能を超える、人間を支配する、さらにはAIが暴走する。AIというのは一つの権力ではないのか。それで監視の対象と位置付けている。三つ目が、記者が取材するということで、ここが一番大事だ。AIは人に会ったり、現場に行ったりすることはできない。災害や戦争で見たこと感じたことを、喜怒哀楽を伝える。共感する。こういうことはやはり人間にしかできない。

「全振り」イコール「丸投げ」ではない

朝日新聞のAIへの「全振り」宣言は、25年9月に角田社長が社内の会議で話したのがスタートになった。AIを使って何ができるのか、どこまでできるのかを徹底的に追求してほしいと。社内外の皆さんに全部の記事コンテンツをAIで作るのかとか、AIの生成結果をそのまま記事に使うのかと尋ねられるが、これは違う。趣旨は、AIを最大限に活用した上で人間の役割分担を最適化していくということだ。

例えば、お知らせの記事とか人事異動の記事は、AIに下書きを書いてもらって人間が確認した方が早くできる。情報収集やデータ分析、翻訳とかも得意だ。他方で、人間にしかできない、AIに任せるべきではない仕事もあるんじゃないか。事実関係の確認、それと特に大事なのは、その日に何が一番大事なニュースなのかという価値判断だ。

今年4月から、新人記者には入社してから1年間は原稿作成のプロセスに限ってはAIを使わないよう通知した。AIが出した結果をうのみにせず、きちんと確認する作業が欠かせない。

水野 AI活用の実践装備を進めているストーリーハブについて、田島さんから概略を説明していただきたい。

入口と出口は人間が押さえる


田島将太氏

田島将太氏

田島将太 私たちの主力サービス「ストーリーハブスタジオ」は、AIを使ってコンテンツを作るサービスだ。AIを使って記事を書くというと、丸投げと思われがちだが、最初の企画・取材のところはほとんど人間がやらないと、ウェブ上にない情報を人間が取ってこないと意味がないだろうと思っている。逆に文字起こしなどはAIの力を最大限に借り、最後のレビュー、校正、校閲といったところはAIの支援を借りながら人間がしっかり目を通すことが大事だ。入口と出口はしっかり人間が押さえた上で、中間でいい感じにAIを使うという思想で運営している。

ストーリーハブには、こういう手順で情報を加工するといい記事になりますよというレシピが用意されている。例えば、動画とか音声から対話形式のインタビュー記事を作るというレシピを起動して、一次情報となる素材ファイルをアップロード。生成ボタンを押すと記事が出てくる。こんな形で80点ぐらいのものは最初与える情報がうまければ作れると思うが、100点はどうしても難しいなと思っている。最後は人間が100点に仕上げていくことが大事かなと。

AIで浮く余剰資源の再配分は経営判断

私たちの製品を使ってコンテンツを作る時間が4分の1になるとか結構いらっしゃるが、4分の3の時間で何をしているかというと、他の仕事をたくさんやっている。記事数を4倍にするのか、その分休むのか、新しい事業をやるのか、AIを使ったことで浮いた余剰リソースをどう再配分するかというのはすごく大事で、この経営判断が各社の方向性を分けていくのかと思っている。

生成AI時代に人間に求められるスキルは何か。まず取材力はこれまで以上に大事になってくる部分だ。ウェブ上にない情報はAIには扱えないので、それを取って来るのは人間にしかできない仕事だ。また、100点を作れるのは、100点を知っている人間だけなのではないか。足りない部分があるな、と気付ける審美眼をどう鍛えるかも大事なポイント。最後はディレクションといった部分で、人とAIの役割分担の判断ができることもかなり重要なスキルになってくる。

水野 次に、AI企業とメディアの関係について、ずっと発信してきた堀さんに伺いたい。

「コンテンツ企業主権」の定着を


堀鉄彦氏

堀鉄彦氏

堀鉄彦 1年前ぐらいまでは、メディアはAI企業にコンテンツを全部提供して学習させて、使われ放題みたいな形の契約だったが、それが参照だけとか、いろんな利用形態を選べるようになってきた。コンテンツ主権というものをコンテンツ企業が取れる形で、AI企業と付き合えるようになった。大きな変化だ。MCP(Model Context Protocol、AIと外部システムをつなぐ標準規格)技術を起点にAI企業とメディアコンテンツ企業の関係が大きく変わり、これからメディア主権という考え方を定着できるのではないか。

ニューズコーポレーション(とオープンAI)の5年契約2・5億㌦とか、いろいろ大型契約も話題になったが、問題は全部を渡す契約で、そこからどうなっていくのか、どう使われているか全く分からず、誰が作ったものかの表示も結構いい加減だったりとかするので、メディアの存在感は渡せば渡すほどなくなっていく。

先進的なのが学術出版社の米ワイリーだ。コンテンツの利用形態をいろいろと制御できる形のプラットフォームを自ら開発し、それでアンソロピックとかさまざまなAI企業と、コンテンツ企業がコントロールする形の契約を結ぶことに成功した。コンテンツビジネスとしてのAIプラットフォーム創出の一大成功例で、この中核にあるのがMCPというプラットフォームの活用だった。これがオープンな国際標準になったことで、どんどんMCPを使ったコンテンツの取引が広がり始めている。

日本型のAI取引標準の確立を

やはりワイリー型とかコンテンツ企業主権の仕組みの精緻な分析とそれの日本型への適応ということを、われわれは考えるべきかなと思っている。必ずこういうことになると、国際標準を日本発で作れという話になるのだが、日本企業が国際標準なんて提案しても、ごく一部で取り入れたケースがあるぐらいで、オールで取られるわけはない。今あるワイリーとかMCPとかいろいろな仕組みを使って、日本のAI取引標準を確立すべきだろうという提案をし始めているところだ。日本の報道機関としてのAI取引標準をワイリーみたいな形か、何にしろ作らないことには誰も考えてくれない。日本は日本で標準を作り、それを国際標準とハイブリッドで提供していくという戦略をニュースメディア企業はまさに今考えるべきではないだろうか。

水野 AIをメディアがどのように活用しているかという実践例を研究してきて、日本だけではなく中国あるいは韓国との比較研究をされている華さんに関心の方向を伺いたい。

フィジカルAI、人型ロボットに関心


華金玲氏

華金玲氏

華金玲 私は大連の外国語大学の日本語学科を卒業し、2000年に日本に来て、日本の携帯電話サービスの仕組み、制度的なことも含めて、携帯電話の産業的な研究をしてきた。新しいテクノロジーをどのように使って社会課題の解決につなげるのかというのが最近の研究になっている。マスメディアでの生成AIの使い方によって、マスメディアの存在、社会的位置付けが大きく変わるのではないかということで、昨年からテレビ局などを回って取材してきた。

その後、今年になってからフィジカルAIに関心が高まり、人型ロボットばかり追い掛けている。5月に長崎県立大学で人型ロボットを使い、大学教育の現場でAIを現実の社会で体験するというのはどういうことなのかを、学生と一緒に考えている。チャッピー(チャットGpT)にボールを投げても返してくれないが、ロボットに投げたら返してくれる、そこは決定的に何が違うのか、というところに関心がいっている。

偽情報、誤情報は止め切れない?

水野 今回のテーマである「AI時代の報道」というところにフォーカスしたい。どんな課題を今感じているのか。具体的には偽情報や誤情報のまん延、著作権の侵害など深刻な問題が山ほどありそうだ。

東岡 まず、堀さんのお話にも通じると思うが、コンテンツの無断利用について。AI企業が無断でコンテンツを収集して、対価を支払わないということが非常に大きな問題だと思っている。その結果、メディアが適切な対価を得られずに経営が悪化してしまい、民主主義を支える役割を果たせなくなってしまうのではないかという危機感は、日本だけでなく海外にもある。

偽情報については、朝日新聞社は16年からファクトチェックに取り組んでいる。政治家の発言などを中心に誤りを指摘する活動をしてきたが、急速なSNSの発展や生成AIの登場により量が増え、巧妙な偽情報が出回るようになった。特に新しい課題としてはディープフェイクだ。画像とか動画もそうだが、一見本物か偽物かよく分からない。人の目でチェックして判断するのは非常に難しい。

水野 ストーリーハブは偽情報、誤情報のまん延に対応できるような方法、対策を考えられるのか。

田島 偽情報、誤情報の対策が難しいのは、やはり非対称性が大きいからかなと思っている。偽情報を作って流すのは簡単だけど、それを検知して止めるのはすごくコストがかかってしまう。真っ向からちゃんと止めようとして止め切れないものではあるのかなとは思っている。

ただ、偽情報、誤情報もだんだん性質が変わってきているのではないか。一番話題になったのは16年の米大統領選で、マケドニアの若者たちがお金を稼ぐために偽情報を作ってフェイスブックに流して収益化していた。ただ最近は、テキストコンテンツの広告単価が下がってきているので、あまり儲からなくなってきた。経済的なものよりは政治的なプロパガンダに近いような偽誤情報など、情報戦の様相の方が大きくなってきている。

「AIがニュースを選ぶ基準」をメディアは示せ

すごく極端な未来を想定すると、まずAIが記事を読んでそれを人間に伝えていくようになると思う。そうなった時にAIがコンテンツをどう選ぶかが大事になってくるので、AIがニュースをキュレーションするための判断基準みたいなものをメディア側が提示していくのはすごく大事なんじゃないか。今あるのはほとんどがアメリカで作られた指標で、日本で作られた指標はそんなに多くない。つまり米国のAIの性能はすごく高いけれど、日本のニュースを読むのはすごく下手かもしれない、ということが今現実に起きている。ニュースをキュレーションするならば、こういった基準は満たしてほしいみたいなベンチマークを、日本のメディア側が作ってビッグテックに出していく。それをしていかないと、AIがいつの間にか偽情報、誤情報をうっかりピックアップして届けてしまうのではないか。

水野 そういった機能をAIが持つようになったら、偽情報、誤情報を除外、削除するような機能を高めることができるのか。

田島 AIは大手の公共機関だったり大手のメディアが発しているものであるというシグナルはちゃんと見ている。そこはシンプルに大手メディア企業が出す情報量を増やすことによって、その優先度が上書きされていくことが大事になってくる。今問題になっている誤情報トピックをいち早く検知して、それに対して違いますよという言説を発表することができれば、後はAIが大手の企業が言ってくれるんだからそれに違いないと判断してくれる。

 日本では偽情報、誤情報もそうだがいろいろな問題をメディア側に投げ過ぎていると思う。生成する側で何か対策を打てないか。日本はチャッピーとかもメールアドレス一つで登録できる。中国ではあれだけ使われていてもあまり犯罪が出てこないのは、中国の携帯電話は実名制(だから)だ。携帯電話番号で登録すると、ちょっとでも怪しいキーワードとか入れると自然に把握できる仕組みになっている。そこまで言うと、中国だからという部分が出てくるが、少なくとも日本では公的機関で、ある種の制度、仕組みを作ってほしい。

「NYT対オープンAI」裁判がメルクマールに

水野 もう一つ大きな問題として出た著作権の問題がある。

 AIとの関係で一番注目されるのは、「ニューヨーク・タイムズ(NYT)対オープンAI・マイクロソフト」の裁判だ。そのプロセスの中でNYTはすごく頑張っていて、何とオープンAIがNYTを利用する際のプロンプト(指示文)のチャット2千万件を開示させることに成功した。NYTというメディア企業の中でも最先端の解析能力を持っているところがオープンAIのチャットを分析したそのプロセスと結果を、23の原告が共有することになったことは大きいと言われている。日本のメディアは、今度パープレキシティに対しては訴訟を起こしたが、訴訟を起こすのにもっと積極的になってほしい。

日本発の標準を作る、それから国際標準を正規ルートで提案する、さらに訴訟の仲間にも入るという三つのからめ手で、日本の報道機関の権利を守っていく。オープンAI、パープレキシティとは戦いつつ、グーグルとは一緒にやりながらAI企業の最先端の情報を得つつ分析する。直近でパープレキシティ訴訟の結論は大事だが、訴訟のプロセスの中でも例えばNYTと情報交換しながら、法廷の場で主張していくという国際連携がまさに必要なんじゃないか。

水野 (読売、朝日、日経各新聞の)パープレキシティとの裁判は、5月に口頭弁論が始まったが、パープレキシティ側は争う姿勢を示している。

 パープレキシティは世界中のメディアがこぞって訴訟している相手。他のメディアと密に情報交換することがこの裁判に影響するのではないか。

水野 グーグルとかテック企業の方では、そんなに対立せずに上手にメディアと付き合おうという動きも顕在化していると思うが、全体状況としてはどう見るか。

 水面下の交渉に入れるかどうかではないか。誰が味方なのか、結構分からない状況だ。アメリカに続きヨーロッパでの訴訟の結論が出つつあるので、その中でやはりアメリカのフェアユースの要件が日本にも何らかの形で波及してきてしまうのだろう。結論は分からないが、NYTの訴訟がメルクマールになるはずだ。

マネタイズの仕組みを作ることが大事

水野 ライツマネジメントはこれからの新聞社にとっては死活問題ではないか。

東岡 オープンAIに対するNYTの訴訟は本当に大きなニュースだった。こうしたいろいろな訴訟の動向には大きな関心を持って情報収集している。他方、オープンAIはいろいろなメディアと提携したり、NYTもアマゾンとの提携を発表したり、提携と訴訟が同時並行で、あるいは入り乱れている状況だと思っている。何が一番いいのか、常に議論しているところだ。

田島 著作権に関しては、AIからコンテンツを守るという議論になっていって、仮にそれがうまくいってAIが一切参照しなくなってしまったら、実は誰も幸せにならない。新聞社の書いたものが世に届かなくなる。本当の解決策は、きちんとしたマネタイズの手段があることだなと思っている。ユーチューブのコンテンツIDという仕組みがすごく参考になる。自社の動画が勝手に流されているのを見つけた時、三つの選択肢がある。一つがマネタイズで、自分の動画をパクった相手の収益は全部自分に入ってくる。それとブロックと言って取り下げる。あるいはただ見ているだけ。ほとんどの場合、マネタイズを選ぶ。代わりに広めてもらってそこでマネタイズできればそれでよいと。テキストコンテンツの関係も、そういったところに最終的には落ち着いていくのではないかなと思っている。

 今のユーチューブIDは、プラットフォーム側で用意してくれたものだが、それが新聞社側にあるのか。テレビ側にあるのか。発信者側で作らなきゃ駄目だ。幸い、ニュースメディアにはオリジネーター・プロファイル(OP)とか実証実験が始まっているものがあり、仕組みもある。これをAI時代のプロファイルとして活用してAI企業との取引に使った時に、どういう局面が開かれるか。もうAI技術的には多分答えは見えている。

AIの導入はトップダウンで

水野 テレビ局がAIを実際に運用している実例を紹介していただきたい。

 一番成功につながりやすいのは、AIの導入がトップダウンによるケースであることは間違いない。日本テレビの事例から言うと、技術者が現場にいて、もともとAIの専門家で、最終的にタッチパネル1枚ぐらいでペンタッチするような端末まで進化してきている。最初にAIを使った時には、例えば、箱根駅伝で選手と選手の距離がどのぐらいあるかとか、顔認識でこれは誰なのかをしっかり認識してやっていたというところからスタートした。実際、これはつい最近アメリカで大きな賞を何個も取っている。取材した日本や中国の放送局の中で、日本テレビ方式は一番現場寄りのコンテンツ作りで、おそらく放送分野では一番強いと思っている。

関西テレビも、実はテレビ局初のAIドラマ「八雲とセツの怪談事件簿」を真っ先に作って公開していた。これはもう全員AIアシスタントをつけている。やはりトップダウンでスタートした。一番評価されたのが、美術セットの作成だ。生成AIが出てきてからは今まで1週間以上かかっていたのが一気に短縮されたという。

中国ではどこのテレビ局でもこのようなことをやっている。(スクリーンに映像を映して)人間のように見えるが、全員キャラクターだ。「CCTVの○○ちゃん、AIキャラクターです」と表示している。北京でも地方のテレビ局でも、キャラクターを選んで、ロゴ、背景を選び、音色のパターンも選べて、ワンクリックするとほぼ5分以内でニュースが出来上がってしまうという状況が起きている。

日本のコンテンツ文化は面白い

田島 中国では視聴者側はAIアナウンサーとかに対して、すごい勢いで順応したのか。

華 一気に順応した。

田島 もしかしたら、日本でもそうなるかもしれない?

華 ドラえもんのポケットからいろんなものが出てくるし、鉄腕アトムだってアバターというか人型ロボットだ。ネット空間のアバターと実在するものをリンクして、その中で一つ共感を得つつ、困ったことを助けてもらうという文化は、(日本は)どこの国よりももう既に出来上がっている。

堀 ちょうど一昨日、ランウェイという米国のプロ用動画を作るAIプラットフォームの経営陣が来日。取材したが、コンテンツの生まれ方が、米国はトップダウンで出てきて押し付けられるが、日本はいいなと思ったものが下から上がってくる仕組みだ、という話で1時間ぐらい盛り上がった。韓国にも他国にもない、日本という国のコンテンツのでき方であり、まさにAIのプラットフォーム管理が分散型になりつつある今、日本は面白いと彼らも思っている。日本発の誰が作ったコンテンツかというIDを日本のルールとして作っていくことがやはり必須だろうなと思った。

華 日本のアニメ動画がもうどれだけ魅力(的)なのか。大学院生の7割から8割が海外から来るが、その半分以上が日本のアニメとかを見て来ているという。コンテンツはこれから作っていく時代なので、まさに日本の得意なところ。日本のコンテンツ文化をAI時代に出遅れさせてはいけない。

  本先生の話につなげると、アテンションエコノミーと関係ないところでコンテンツが生まれている。これって強いと思う。

 めちゃくちゃ強い。

ルールを作れば収益はついてくる

水野 2030年ぐらいの時点を考えた時に、新聞社として、AIの進展に対してどんな姿が予想されるか。

東岡 30年の社会とかメディアのありようは想像できないが、やはり変えてはいけないのは、冒頭申し上げた通り、人間にしかできないことだと思っている。記者として何をなすべきなのか。それは1次情報を持ってくる、信頼関係に基づいて話を聞いて、それをお届けしていく。人間にしかできないこと、記者にしかできないことは何だろうか、ということを自問自答することがすごく大事だ。

水野 最後に、AIを活用することで報道機関は今よりも収益を上げられるようになるか。

堀 収益を上げられるチャンスは明らかに来ていると思う。諦めずに日本でAIを開発し、AI取引の定義を作り、今の分散化が始まってきつつあるところをチャンスにすべきだ。ルールを作れば自然と収益はついてくると思う。

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