6月1日から3日まで、フランス南部の港湾都市マルセイユで「世界ニュースメディア大会」が開催された。主催は世界各国の報道機関が加盟する「世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)」(本部パリ、フランクフルト)である。本大会は今年77回目となり、60カ国以上から約1300人のメディア関係者が出席した。筆者は今回参加できなかったが、WAN-IFRAの現地報道を基に、「自由のための金のペン賞」の授賞式とジャーナリストを送り出す側となる編集者の心の傷をめぐるパネル討論の様子を紹介したい。

ガザの記者たちへ

「自由のための金のペン賞」は報道の自由を守ることに貢献した人や団体を顕彰するもので、今年はパレスチナ自治区ガザで命を懸けて活動する写真・ビデオジャーナリストたちが選ばれた。AFP、AP、ロイターの3通信社を代表し、壇上に立ったのは3人のパレスチナ人写真家だ。

AFPのモハンマド・アベド氏はまずこう述べた。「壇上に立つ私たちのためではなく、今もガザでカメラで真実を記録し続けている同僚たちのために、そしてもはやカメラを手にできず、この仕事で命を落としたジャーナリストたちのために、この賞を受け取りたい」。

この取材は他の紛争報道とは根本的に異なっていたという。「私たちは傍観者ではなかった。葬儀を撮影する時、そこに写っているのは知人だった。食べ物もない子どもたちを撮影する時、それは自分のコミュニティーの子どもたちだった」。ガザは自分たちの故郷であり、他人の戦争ではなかった。

アベド氏によると、ガザ戦争開始以降、イスラエル軍によって264人のジャーナリストが殺害され、174人が負傷した(報道の自由侵害や記者の殺害を追跡調査するジャーナリスト保護委員会=CPJ=調べ)。CPJが記録を開始した1992年以来、一国によって殺害されたジャーナリストの数として最多である。

APのファティマ・シュバイル氏は、もう一つの困難を語った。通常、戦場に派遣された記者は交代で現地を離れ、休養と回復の時間を持つ。ガザではそれが不可能だった。2023年10月にイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まって以降、外国人記者はほとんどガザ地区に立ち入ることができず、現状を伝える役割は主としてガザに暮らすパレスチナ人ジャーナリストが担ってきた。「イスラエル軍が進攻するにつれ、私たちは家族とともに移動しながら取材した。電気とインターネット接続が確保できる場所を探しながら、多くの場合は病院が拠点になった。交代はなく、息を抜く時間もなかった」。

ロイターのモハンマド・サレム氏は、個人的な深い痛みを語った。同僚たちは「PRESS」と表示された防護ベストを着用したまま、車や病院の中で殺された。「戦闘員」と呼ばれることもあった。サレム氏自身の兄もこの戦争で命を落とした。「その悲しみは消えない。しかし仕事は続く。記録し続けることが重要だ」。

ガザ南部ハンユニスのナセル病院の霊安室でサレム氏が撮影した1枚がある。パレスチナ人女性が、空爆で亡くなった5歳の姪の遺体を抱く写真だ。2024年、世界で最も権威ある報道写真賞「ワールド・プレス・フォト・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。「写真は目だけで撮るものではない。撮る者の思いが込められていなければならないと私は信じている」。サレム氏は最後にこう述べた。

「ジャーナリストが殺され、敵と呼ばれ、締め出される時、苦しむのはジャーナリストだけではない。真実を必要とするすべての人が苦しむ」

誰が編集者を守るのか

大会最終日、「編集者を誰が守るのか」と題されたセッションがあった。始まる数時間前、パネリストの1人となっていた、ウクライナの調査報道機関「スリドストヴォ・インフォ」のアンナ・バビネッツ編集長は、ホテルで電話をかけ続けていた。前夜のロシア軍による攻撃で、取材チームが使用していたアパートが破壊されたという知らせが入ったからだ。それでも彼女は登壇した。

「これが今の仕事の現実だ。何が起きても、対応できるようにしておかなければならない」

パネルにはトロント大学精神医学教授のアンソニー・ファインスタイン氏、国際人権弁護士のカオイルフィン・ギャラガー氏も加わった。ファインスタイン教授は約30年にわたり戦場記者と心的外傷後ストレス障害(PTSD)の関係を研究してきた。ケニアやメキシコ、アフガニスタン、イランなどで行った過去の研究結果を今年改めて検証したところ、「結論は変わっていなかった」という。ジャーナリストのPTSDやうつ、不安障害の発症率は、一般人に比べて著しく高かった。また、見落とされがちなのが、ジャーナリストを管理する編集者への影響だ。困難な取材地に記者を送り出す編集者は、記者の安全を守る道義的責任を負う。それは現場の記者とは異なる種類の、しかし同じくらい重い苦しみをもたらすという。

ギャラガー弁護士は編集者が直面するリスクを三つに整理した。一つ目は「二重の負担」だ。自身も標的にさらされながら、スタッフの苦しみを1人で抱え込まなければならない状況がある。二つ目は「2次的トラウマ」。記者が投獄され、拷問され、あるいは殺されるという危機を管理する過程で編集者自身が負う心理的打撃である。

三つ目は、標的化の拡大だ。法の支配が機能しない国々で、編集者や発行者がその指導的立場ゆえに狙われるケースが世界的に増えているという。

AFPグローバル・ニュース・ディレクターのフィル・チェットウィンド氏は150カ国以上、約1700人のジャーナリストを束ねる立場から、組織改革の経験を語った。「まず問題を直視し、予算を割き、専門家の助けを借りる。そしてリーダー自身がトラウマやメンタルヘルスについて率直に語れなければ、誰もついてこない」。

バビネッツ氏は自らの経験から三つの原則を挙げた。仕事と個人の時間を厳格に分ける、映画や読書など普通の生活を維持する、そして編集者同士が悩みを打ち明けられる場をつくること。ファインスタイン教授は「組織としての支援も不可欠」と付け加え、「良好な人間関係が、精神的健康を守る最大の要因だ」と締めくくった。

来年の世界大会はストックホルムで開催予定だ。

文字サイズ