ドンロー主義の米国
1月のベネズエラでの軍事作戦は、トランプ米大統領の外交戦略「ドンロー主義」を象徴する衝撃的な出来事だったが、それを上回ることが2月末に起きた。米国とイスラエルがイランを攻撃し、最高指導者ハメネイ師を殺害した。まさに予測不能を地でいき、第1次政権を取材してトランプ氏に対する免疫があるつもりだった私も講演を準備していて振り回された。
ただ、講演のテーマ全体をひっくり返す必要はないと思う。西半球重視のドンロー主義というトランプ政権高官が練り上げた「表の戦略」と、そこからはみ出る大統領本人の「衝動」、この2層構造こそがトランプ外交の特徴であって、イラン攻撃はそれをより鮮明に示してくれたからだ。
まず政権の戦略の大枠を理解してこそ、そこから外れるトランプ氏の本質が浮き彫りになるだろう。
西半球重視と対中抑止
19世紀の米国の外交ドクトリンとして知られているのがモンロー主義だ。第5代大統領のモンローが示した。欧州列強の西半球への干渉を拒否するというもので、第2次世界大戦まで続く米国の孤立主義の基底となった。
ドンロー主義は、このモンロー主義のトランプ流の解釈という意味で使われ始めた。モンローと、トランプ氏のファーストネームのドナルドを掛け合わせたものだ。昨年12月にトランプ政権が発表した国家安全保障戦略(NSS)の中では、①西半球での米国の優位回復②域外の競争相手の排除③西半球の地理的要衝のアクセス防衛─と定義されている。
第1次トランプ政権やバイデン前政権は、中国を最大の脅威と位置付け、インド太平洋を最重要地域としてきた。それではなぜ方針転換したような西半球重視のドンロー主義が生まれたのだろうか。
トランプ政権内には、「MAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン=米国を再び偉大に)」派と言われる熱心なトランプ支持者や、「抑制主義」という海外への軍事介入を嫌う人たち、それに加えて、ルビオ国務長官を代表とする対中タカ派など思惑の異なる人たちがいるが、相反するような意見を集約して、一つの戦略にしたのが西半球重視だ。
ただ、単に西半球だけを重視する戦略ではないし、モンロー主義のような孤立主義でもない。ここでは、より大きなトランプ政権の世界観としてドンロー主義を捉えたい。第1次トランプ政権で国務次官補を務めたウェス・ミッチェル氏がフォーリンポリシー誌に寄せた論考が参考になる。
ミッチェル氏は、対中競争を重視する「優先主義」の立場からドンロー主義を説明している。米国は裏庭である西半球への影響力を強化する一方で、それ以外の主要地域のアジア、欧州、中東においては同盟国が責任を分担してバランス・オブ・パワー(勢力均衡)を保つことで国際社会の安定を目指しているという。
米国の国力が相対的に落ちる中、欧州や中東への関与を弱めて、中国との長期的な競争を見据えて国力を回復する。そのためには、まず西半球で地域的な覇権を再構築する必要があるという論理だ。
一方で、西半球を特に重視するのは、中南米からの不法移民対策、それから麻薬流入対策とも結び付けることで、国内経済や治安を重視するMAGA派にも受け入れられやすくするためだ。
ミッチェル氏は、このドンロー主義で示された戦略について、「コンソリデーション(地固め)」という言葉で説明する。
この戦略を現実に投射したのが、1月3日の対ベネズエラ作戦だ。トランプ政権は、あくまで戦争ではなく米国の治安維持、麻薬取り締まりの延長線上の法執行だと主張した。ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束して、麻薬密輸などの罪で起訴してニューヨークで裁判にかけるのはそのためだ。2003年のイラク戦争のように政権を転覆して米国が統治に関わるという形は取らず短期間で作戦を終えたのも、海外介入に否定的なMAGA派への配慮があった。
また、対中タカ派の観点からすると、ベネズエラと関係の深かった中国をベネズエラの石油取引から排除することも重要だ。中国との関係を深めている他の中南米諸国へのけん制になったのは間違いない。モンロー主義は欧州の西半球への関与排除を求めたが、ドンロー主義では中国関与の排除が特徴的と言える。
国際社会の懸念
ドンロー主義の採用は世界中で懸念を招いているが、それは西半球重視という戦略方針そのものではなく、ベネズエラ攻撃で顕著になった戦略の実行の仕方にある。
攻撃は自衛権の行使とも言えないし、国連安保理決議もない国際法を無視した行動というのが国際的には一致した見方だろう。トランプ氏の最側近の一人、ミラー大統領副補佐官はCNNテレビで「世界は力によって支配されている」「世界の鉄則だ」と述べて攻撃を正当化した。
トランプ氏自身もニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで「自分は国際法には縛られない。縛るのは自分自身の道徳観だけだ」と言い放った。
背景にあるのは「米国第一」「力による平和」という第1次政権時からスローガンとして掲げてきた考え方で、米国の利益になることは国際法を無視して力ずくでも追求していくという姿勢の表れと言える。
ベネズエラ攻撃は、単なる国際法違反にとどまらない。米国が「力こそ正義」という論理を公言することで、第2次世界大戦後、米国が主導してきた「ルールに基づく国際秩序」を自ら破壊しつつある。
こうした動きに対して、カナダのカーニー首相が1月にダボス会議で行った演説が注目を集めた。カーニー氏は「ルールに基づく秩序は衰えている」「古い秩序は戻らない」と警鐘を鳴らした。ドイツのメルツ首相も2月のミュンヘン安保会議において「ルールに基づく国際秩序はもはや存在しない」と発言した。同盟国の中からトランプ政権への懸念の声が噴出している。
米国が国際秩序への無関心を続ける中、欧州諸国は中国への接近を強めている。昨年12月以降、フランス、カナダ、英国、ドイツの首脳が次々と中国を訪問しているのは偶然ではないと思う。
特に英国とカナダは、中国の習近平政権による香港の統制強化を受けて、中国に対する警戒感や反発を非常に強めていた。しかし、今やカーニー氏は「中国との関係の方が対米関係よりも予測可能だ」とまで言うようになってしまった。
米国が西半球で「地固め」をしている間に、同盟国を最も警戒すべき中国に追いやっているとなれば、戦略の自己矛盾と言わざるを得ないのではないかと思う。
対中抑止は本気か
ドンロー主義では中国との競争への備えを優先課題に掲げているが、トランプ政権の実際の対中政策はどのようなものか。1月に国防総省が発表した国家防衛戦略(NDS)では、西半球を最優先としながらインド太平洋も重視する地域とし、中国を抑止すると記されている。さらに欧州や中東とは異なり、同盟国だけでなく米国が同地域における勢力均衡の維持で主要な役割を果たすことが明示されている。
第2次トランプ政権の対中政策は、第1次政権と構造的に似ている。第1次政権では、トランプ氏が習近平国家主席と貿易面でのディールを求める一方で、ペンス副大統領やポンペオ国務長官ら外交安保閣僚は、中国への強硬姿勢を強めていった。ニクソン政権以来の「関与政策」は終わり、中国との大国間競争を重視する立場への転換を鮮明にした。
第2次政権もほぼ似たような構図になっていて、ルビオ国務長官や、バンス副大統領、コルビー国防次官ら政権中枢には対中タカ派で中国との競争を重視する人がそろい、ドンロー主義の示す中国を抑止するという点で一致している。
これに対してトランプ氏自身は第1次政権時と同様に、習氏と何らかの取引を実現することを望んでいる。具体的には、11月の中間選挙に向けて農産物の輸入拡大といった経済面で成果を挙げたいという思惑がある。
今年は米中関係にとって、近年で最も重要な年になるとみられている。トランプ氏と習氏の首脳会談が4回行われる可能性があり、「グランドバーゲン」と言われるような取引が成立するかどうかに注目が集まっている。引き合いに出されるのは、1971年のニクソンショックだ。ニクソン大統領が突然訪中を発表し、将来の国交正常化を目指す融和路線への政策転換を行った。日本は事前に知らされておらず、はしごを外された苦い経験がある。
トランプショックはあるのか。注視すべきは、「台湾と大豆の取引」があるのかどうかということだ。
台湾について、トランプ氏が中国による台湾統一を明確に支持したり、武力侵攻を黙認、許容することはさすがにないだろう。
米国の専門家の間で警戒されているのは、トランプ氏が公に「台湾独立に反対する」と述べるのではないかという点が一つ。「台湾独立を支持しない」というのが米国の公式の立場だ。「支持しない」から「反対する」への変更という細かいワーディングの世界だが、中国はサラミ戦術で米国から少しずつ譲歩を引き出すことを狙っているのではないか。
すでに中国は、米国の対中政策の基本線に切り込もうとしている。米国の対中政策は、①「一つの中国」政策②台湾関係法③「六つの保証」─の三つが中心だ。六つの保証の一つに「台湾への武器供与に関しては中国と相談しない」という項目がある。これに関してトランプ氏が2月に習氏と電話会談した後に、台湾への武器追加供与について習氏と話し合っていると述べたことで、米国の専門家の間で波紋が広がった。
習氏は電話会談の中で「米国は台湾への武器売却に慎重になるべきだ」と伝えたとされ、これを受けてトランプ氏が武器供与を一時的に延期することになれば、事前に中国とは相談しないという台湾への「保証」に違反している可能性が高いためだ。
一方の大豆については、昨年10月に韓国で行われた米中首脳会談で中国が米国産の大豆を購入することが議題になった。これがトランプ氏にとって非常に重要なのは、支持基盤である中西部の農家に影響するからだ。
中国は今後3年間で年間2500万㌧を購入するということで既に合意しているが、これを拡大すれば、トランプ氏としては中間選挙に向けて大きな成果にできる。その引き換えに台湾問題に関して何らかの譲歩をするかどうかが、今後の米中首脳会談の焦点になる。
ただ、先に述べたように政権中枢は、バンス、ルビオ、コルビー各氏ら対中タカ派が占めている。ディールに前のめりになるトランプ氏の衝動を抑制できるかどうかで対中抑止の本気度が測れるだろう。
MAGA、福音派、レガシーづくり
ここまで西半球重視と対中抑止を軸とするドンロー主義の大枠を見てきたが、トランプ氏が、政権高官の描く戦略の通り動くかどうかはまた別問題だ。
対中政策でも、中国を抑止するという戦略の方向性に反するようなディールに色気を出すトランプ氏の衝動が見え隠れしている。トランプ氏本人に明確な外交ビジョンがあるわけでもなく、その場の思い付きやインスピレーションを重視するのが特徴だ。
ただ、トランプ氏の行動がまるっきり予測不可能なのかと言えば、そういうわけでもない。同氏を突き動かすアクセルのような要素と、そしてそれを抑制するブレーキについて検討したい。
トランプ氏の行動を後押しする要因については、MAGA派とキリスト教福音派という二つの支持基盤が重要だ。それに加えて、トランプ氏本人の「レガシーづくり」の欲求という、この3点がトランプ大統領のアグレッシブな行動に非常に影響していると思う。
MAGA派は熱狂的なトランプ支持者で、海外への介入を嫌う抑制主義的な外交と親和性がある。高関税政策など国内の製造業を復活させることを目指した政策も、MAGA派受けを狙ったものだし、ベネズエラ攻撃で焦点になった移民対策や麻薬対策もMAGA派の支持を得るためだろう。
福音派は、大統領選や中間選挙のたびに日本でもクローズアップされてきた保守勢力で、トランプ氏の最重要支持基盤の一つ。人口の20%ぐらいを占めているため、選挙戦で福音派の支持が非常に重要になってくる。人工妊娠中絶の禁止など宗教面での保守的な政策の推進、外交面では親イスラエルという点が特徴的だ。
そしてトランプ氏のレガシーづくりの欲求だが、トランプ氏は2期目を迎え、普通にいけばあと3年弱で引退だ。憲法上の制約で3選はできない。憲法改正とか、超法規的な措置がなければ不可能だ。一般的に2期目の大統領は歴史に残る実績に焦点を当てていく傾向にある。トランプ氏は就任演説の中で、自身のレガシーになるものとして「ピースメーカー」だと主張している。八つの紛争を解決したと繰り返し述べ、主に外交面での「業績」を強調する。
一方、トランプ氏の衝動的な行動を制約するブレーキも存在する。TACO(トランプ・オールウェイズ・チキンズ・アウト)とトランプ氏を揶揄(やゆ)する言葉が知られている。「いつもビビって、最後には逃げる」という意味の造語で、市場関係者が作ったと言われている。
昨年4月の高関税政策発表後、市場が動揺すると即座に延期したというのが典型例だ。対中関税引き下げや、グリーンランドを巡って欧州への関税をかけると脅したもののすぐに取り下げたのも、市場の動きがブレーキになっていると思う。
また、熱烈なトランプ氏支持のMAGA派はアクセル役でもあるが、一方でブレーキ役にもなっている。MAGA派は内政を重視し、アフガニスタン戦争やイラク戦争のような海外派兵を批判してきた。ベネズエラの軍事作戦を短期間で終えたのも、MAGA派への配慮があった。
トランプ氏の行動を探るのにもう一つ見ておきたいのは、11月の中間選挙だ。トランプ氏の短期的な政治目標はこの中間選挙で勝利することと言っていい。上院は改選議席数の構成上、共和党が優勢とされるが、下院で共和党が負ければ、トランプ氏は1期目の時と同じように下院で弾劾裁判にさらされる可能性が高く、レームダック化が加速するだろう。
中間選挙を前にトランプ政権は内政面で行き詰まっている。一つは物価高で効果的な対策を設けていないということがある。最重要政策として掲げてきた移民対策に関しても、行き過ぎた取り締まりが国民の反発を招いている。ミネソタ州で不法移民の過剰な取り締まりを行い2人が死亡したことが一つの転機になった。
トランプ氏の支持率自体も低下が著しい。2期目発足直後は50%を超えていたが43%台に低迷している。議会は共和党と民主党が拮抗していて、法案を通すのも容易ではない。
内政面で成果を出せない大統領は外交に活路を求めるのが典型的だ。ベネズエラでの軍事作戦、そして今回のイラン攻撃に踏み切った判断に、内政での苦境が一つ影響しているのは間違いない。
イラン攻撃の背景
これまで説明してきたドンロー主義の世界観、トランプ氏を突き動かす要素、中間選挙を控える政治状況を踏まえて、トランプ外交の現在進行形の問題について検討したい。
最も関心を集めているのはイラン情勢だろう。ドンロー主義で重視する西半球でもインド太平洋でもない中東に、なぜトランプ氏が傾斜しているのか。NDSは「介入主義、終わりなき戦闘、体制転換、国家建設に煩わされることはない」と言明し、トランプ氏自身も大統領選の公約で、新しい戦争を始めないと主張してきた。イラン攻撃はこれらに完全に反する動きだ。トランプ氏の本能的な衝動が戦略を上回った典型例と言える。
その理由の一つは、やはりレガシーづくりにある。1979年のイラン革命以来、敵対してきたイスラム体制を打倒することで歴代大統領が成し遂げられなかったことを実現したいという野心に火が付いた。イランは昨年、米国とイスラエルによる限定空爆を受け弱体化しており、今がチャンスと思ったのではないか。
1月のベネズエラの軍事作戦では、わずか2時間でマドゥロ大統領を拘束するという成功体験があり、イランでも同様に短期間で成果を上げられると考えたのだろう。イスラエルのネタニヤフ首相が「今しかできない」とささやいて引き込んだ側面もあると思う。
もう一つは中間選挙前に、支持基盤の福音派の歓心を買う要素もあった。親イスラエルの福音派は、イスラエルの宿敵イランの弱体化を歓迎しており、イラン攻撃の判断を後押しした可能性がある。
一方で、対外介入で抑制方向に働くMAGA派はどうか。MAGA派の中でトランプ氏に近い論客タッカー・カールソン氏は、イラン攻撃を「完全に嫌悪すべき邪悪なもの」と強いトーンで反発した。とはいえ、MAGA派の多くは「トランプ絶対主義」でもある。現時点では岩盤層はトランプから離れていないと思う。
トランプ政権は、イラン攻撃の目標について、①ミサイル能力の破壊②海軍の破壊③核保有の阻止④親イラン勢力の支援・遮断─という四つの目標を挙げている。ミサイル能力の破壊、海軍の破壊は物理的に可能かもしれないが、核保有の阻止とか親イラン勢力の遮断について、具体的に明確な形で成果を上げられるのかは不明だ。
これらの目標を実際に達成できるかどうかはともかくとして、トランプ氏は「作戦が成功した」「勝利した」と一方的に宣言してイラン攻撃を中止する可能性は十分にある。トランプ氏は開戦当初に体制転換を促していくと言っていたが、四つの目標には含まれておらず、トーンは少し変わってきている。
TACOによるブレーキも重要だ。ホルムズ海峡の事実上の閉鎖を受けて原油価格が乱高下している。TACOが発動されて、トランプ氏が戦闘停止の方向に傾く可能性も高まっている。
だが、イラン・イスラム体制の転覆は困難で、体制の対米姿勢をより強硬にするだけかもしれない。イラン側は、イスラエルへの報復だけでなく、湾岸諸国の米軍基地を攻撃しており、トランプ氏が戦闘終結を表明しても泥沼化して紛争が中東広域に拡大するのを止められない可能性も十分にある。
MAGA派の岩盤支持層が反発を強めれば、中間選挙に向けて大打撃になる。かつてのブッシュ(子)大統領のイラク戦争開戦のように、トランプ政権の終わりの始まりになりかねない。
日本は「モデル同盟国」か
最後に、トランプ外交の対日政策について話したい。国家安全保障戦略と国家防衛戦略、この二つの戦略文書の中では、日本についてあまり具体的に触れていない。ただ、トランプ政権の対日政策自体は、これまでお話ししたドンロー主義の枠内で説明できるだろう。トランプ氏の衝動を促すようなMAGA派や福音派、レガシーづくりの影響を受ける要素は、それほど大きくないのではないかと思う。
トランプ政権内に対中競争、対中抑止を重視する認識がある限り、米国にとって日本の戦略的価値は揺るがないだろう。「文明が消滅する」などと批判にさらされる欧州の同盟国とは異なる立場にある。2月の日本の総選挙に関しても、選挙介入と言えるような、トランプ氏の高市早苗首相への支持表明があった。
ただ1点気になるのは、国家防衛戦略の中で使われている「モデル同盟国」という言葉だ。この戦略の中で、モデル同盟国として名前が挙がっているのはイスラエルだけで、これは米国の支援を受けつつも自国を自力で守る意思と能力を示している国、自分の力で地域の安全保障に貢献できる国を意味しているようだ。また、コルビー次官が最近、韓国を訪問して演説したが、韓国についても、モデル同盟国の一つだというふうに持ち上げていた。
日本に関しては、今のところモデル同盟国という表現は聞かれていない。第1次トランプ政権では、マティス国防長官が訪日した際、「日本は同盟国のお手本だ」と評価していたが、第2次政権になってから、日本をどう見ているのかということはまだ具体的な形で出てきていない。日本に求めている防衛費増額などの約束を果たすのかどうかということを見ているのかもしれない。
また、トランプ政権としては西半球重視、対中抑止という大枠で戦略を進めているが、イラン攻撃が長期化すれば、中東に軍事資源を投入し続けることになるということで、日本に対してアジアでの安全保障の肩代わりというか、さらに役割強化という要求が、今後強まっていく可能性もあるのではないか。
国際秩序揺るがすトランプ外交
トランプ政権はあと3年間残っている。ドンロー主義で示した西半球で地域覇権を再確立し、インド太平洋では中国との競争に備えるという大きな外交方針は維持されると見ていい。
他方、この戦略を逸脱したトランプ氏のレガシーづくりの欲求に基づく外交に関しては、ほとんど成果が出ていない。ただ、トランプ氏は失敗を認めないだろう。仲介するウクライナやガザでの和平も、イラン攻撃もうまくいかないとなると、また新しい話題で目を逸らそうとする可能性が高い。
次に焦点になるのはキューバだ。キューバ系米国人のルビオ国務長官が固執するキューバへの圧力は西半球重視のドンロー主義の論理に沿っており、新たな標的として浮上するのは自然な流れだ。
トランプ氏は今後も、話題をつくり続け、成果を挙げたとアピールし続けるだろう。1期目に「トランプ劇場」と呼ばれた所以(ゆえん)だ。
ドンロー主義が掲げる「米国第一」「力による平和」には一定の論理がある。しかし、トランプ氏の衝動が前面に出るとき、それは「トランプ第一」「力による支配」に変容する。イラン攻撃がその最たるものだ。そしてその剥(む)き出しの力への意志が国際秩序を揺るがし続けることになる。(本稿は3月4日に行われた講演内容を要約、一部加筆した)