日本製コンテンツの海外展開を 背景には放送局の広告収入減

このところ、日本製コンテンツの海外展開に向けた取り組みについて、議論が活発化している。そのきっかけは、昨年10月に首相に就任した高市早苗氏が立ち上げた「日本成長戦略会議」が示した17の戦略分野の一つに、「AI・半導体」「合成生物学・バイオ」「デジタル/サイバーセキュリティー」などとともに「コンテンツ」が選ばれたことによる。

高市政権は、この17の戦略分野に官民投資を集中させ、経済成長の具体策を論議・実行するとしており、その司令塔がこの成長戦略会議ということになる。最大の特徴は、財源論と切り離して「危機管理投資」という名目で大型投資を推進する点で、官民連携で危機管理投資・成長投資の促進を促すとしているところだ。

17分野それぞれの危機管理投資・成長投資に向けた具体的な方策に関しては、2026年4、5月をめどに、ロードマップの提示を求めている。

コンテンツ分野の成長戦略を検討するため、この1月に内閣府に「コンテンツ産業官民協議会」が設置され、コンテンツ産業を所管する総務省、経産省、文化庁、外務省の関係省庁や、アニメ、ゲーム、映画、放送業界の関係者が一堂に会して海外展開に向けた流通機能の強化、研究開発や設備投資の在り方などを検討し、ロードマップを示すことになっている。

ただ、コンテンツ産業の海外展開といっても、分野によってその展開状況はさまざまで、アニメやゲームといった分野で、「ポケモン」や「プレイステーション」に象徴されるように、すでに海外市場で一定のプレゼンスを示すまでに成長している一方で、放送コンテンツなど、実写系のコンテンツの海外市場への展開は、いまだに貧弱と言わざるを得ない。加えて、隣国の韓国は、1990年代後半の金大中政権以降の政府主導による強力なコンテンツ産業推進策もあって、実写系コンテンツの国際市場でも、一定の存在感を示すまでに成長しており、その製作単価は、すでに日本のそれを大きく引き離している。

実写系コンテンツの成長プラン

そのようなこともあって、特に放送分野に関しては、総務省がこの1月に「実写コンテンツ展開力強化官民協議会」を設置。実写系コンテンツの製作・展開に係る具体的な方策の検討が進められた。そこでは「海外展開・製作・資金調達」(資金調達WG)、「人材育成、コンテンツ製作力の強化」(人材WG)、「地域コンテンツの製作力・発信力の強化」(地域WG)を検討する三つのワーキンググループを設置。具体的な施策とその目標が議論されてきた。

この実写コンテンツ展開力強化官民協議会は4月20日に総会を開き、「実写コンテンツ展開力強化アクションプラン」を取りまとめた。

そこでは、放送・配信コンテンツを軸とした実写コンテンツの製作力強化と海外展開の促進を図るとして、2033年に2500億円以上という海外輸出額の目標を掲げ、NHK還元目的積立金を財源に「実写コンテンツ製作力強化基金(仮称)」を作り、人材育成等を実施するとしている。

私もこの「地域」WGの議論に参加し、ローカル民放局をはじめとする地域コンテンツの配信の促進や、そのための人材育成、AIやDX(デジタル変革)の導入といった製作力強化の支援など具体策の議論をへて取りまとめを行った。その間に印象に残ったのは、参加した地方局の現場の方々の中には、わざわざ個人的に私の研究室を訪ねて、製作現場の実情と課題について、思いを訴えに来る人が少なくなかったことである。

現場を預かる者たちの放送ビジネスの将来に対する危機意識の現れだと思って、それらの話を伺っていた。

忍び寄る経営危機にどう向きあうか

実写コンテンツの海外展開が注目される背景には、テレビ放送事業の先行きに対する不透明感がある。YouTubeやNetflixといった動画配信サービスの普及・浸透などで、「テレビ離れ」が加速しているとの指摘はあるが、劇的な市場の縮小が進んでいるというよりは、横ばい、逓減傾向が続いているというのが実情だろう。

3月に電通が発表した2025年の「日本の広告費」によると、総広告費が8兆6231億円(前年比105・1%)で、4年連続で過去最高額を更新。その牽引役となっているのがインターネット広告で、4兆459億円(前年比110・8%)。総広告費に占めるインターネット広告の割合が、50・2%と、初めて5割を超えた。

他方で、新聞・雑誌・ラジオ・テレビメディアのいわゆる「4マス広告」は、2兆2980億円(前年比98・4%)と微減だが、4マスのうち、新聞を除くと、ほぼ横ばいである。

ちなみにテレビメディア広告は1兆7556億円(前年比99・7%)だった。広告モデルのメディアビジネスは、マクロ経済の動向に大きく左右される。加えて、昨今の名目賃金の上昇を受け、消費を促すテレビ広告の出稿に結び付いていることも推測される。

ただ、メディア利用者のスマホというデバイスへの不可逆的なシフトや、メディア接触におけるネットへの依存度の高まりの中で、今後、既存のテレビ局の経営環境が厳しさを増すことは間違いないし、特に経営資源の小さいローカル民放局にとっては、その選択肢も限られることになる。

県域を単位に免許が付与されてきたローカル民放局にとっては、その収益は放送エリアの市場規模に少なからず規定される。ローカル民放局にあって、そのコンテンツを動画配信に展開すること、海外市場に挑戦することは、エリアを越えて市場を開拓することに他ならない。

今回のアクションプランにおいて示された海外輸出額を、2033年に2500億円以上にするという目標に関しては、「野心的な数字」と、放送現場には、その実現可能性を訝(いぶか)る声も少なからず存在するのも確かだ。ただ、他方において、放送現場には、これまでの放送ビジネスの在り方を抜本的に変革しなければ生き残れないという危機意識がある。特にローカル放送局の現場においては、問題意識の高い現場ほど、先行きに対する危機意識は切実である。まだ体力に余裕のあるうちに、次世代に向けた準備が問われている格好だ。

ビジネスモデルの再考、人事のロールモデルの見直しを含め、抜本的な改革が求められていると言えるのではなかろうか。

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