8月は毎年、「戦後○年」として、戦争と原爆に関する報道が集中する。8月以外でも、事件発生から1周年や5周年、10周年という節目には一層熱が入る。これらが、いわば〝周年報道〟である。今年は東日本大震災から15年であり、私の地元では熊本地震10周年を迎えた。こうした周年報道に対する各報道機関に見える執念を追ってみたい。
地方19紙アンケートの粘り強さ
ニュース報道は「フラッシュ」の瞬間が最も緊張する。アイスブレーキング・ニュースとも言うべき驚天動地のニュースは興奮させる。この時ジャーナリストには〝瞬発力〟や〝直観力〟が求められる。これに対し、周年報道は真逆だ。十分に準備時間があり、事件を俯瞰(ふかん)する〝総合力〟や〝粘り強さ〟が求められる。
3月11日、東日本大震災が発災から15周年を迎えた。節目の年だったためか、14周年だった昨年以上に各社とも力が入っているように感じた。
共同通信は1~2月に福島を除く46都道府県知事へのアンケートを実施し、3月2日付朝刊用に配信した。そこでは①福島県外処分とすることが決まっている「除染土」の最終処分場を受け入れるか②放射性物質濃度が低い「復興再生土」の公共工事への再利用を受け入れるか─を聞いたが、いずれの問いにも「受け入れる」と前向きな知事はゼロだった。驚きの結果だ。
除染土問題は読売新聞も9日付朝刊1面で「除染土 見えぬ行き先」と問題提起し、さらに1㌻特集を組み、図解付きで詳細に報じている。これは6人の記者らが参加した力作だ。いずれにせよ除染土の最終処分は2045年3月が期限だが、この問題に政治が動く気配がないのは気がかりなところだ。
熊本日日新聞は共同の知事アンケートを掲載したのに続けて、熊日を含む地方19紙が行った合同アンケート結果を震災15年目当日の11日付朝刊で報じた。各地の多様な意見をくみ上げるユニークな取り組みだ。21年から毎年実施している点でも粘り強さを感じる。6年連続調査の結果、例えば原発廃棄論は漸減し、容認論が漸増して今回54・7%にまでなっているという。
11日付朝刊では、熊日の本記は「現在も約2万6千人が避難生活を送っている」と報じ、朝日の本記は「津波被害の岩手、宮城では住宅復旧などがほぼ完了したのに対し、原発事故のあった福島の復興は厳しい歩みが続く」としている。
特に朝日の1面トップは本記ではなく、あの3・11が「44回目の(結婚)記念日」で、夫を失った80歳女性のヒューマン・ストーリーを据えて工夫していた。大きな事件の図を描くのに、人に焦点を当てるやり方はニューヨーク・タイムズなどもよくとる手法だ。
読売の11日付朝刊本記は「岩手、宮城、福島3県の沿岸など42市町村で現役世代(15~64歳)の流出が加速し、減少率は全国平均の倍近い17%に及ぶ」と指摘した。本記的には他紙より書き込まれた内容だった。同時に読売は12㌻にわたって展開しており、東日本大震災の周年報道に対する社を挙げての熱意を感じた。
翌12日付朝刊の1面トップは、熊日は「15年 祈り語り続く」、朝日は「15年 希望を諦めない」、読売は「15年 追憶と伝承と」いう見出し。それぞれ含蓄のある表現だ。各社整理部記者が考えに考えてひねり出したものだと敬意を表したい。
少し物足りなかったのは、東電の福島第1原子力発電所のその後に関する報道だ。朝日新聞が9日付朝刊で「原発コンクリ消失 謎のまま」という1、2面を通しての長大記事を掲載し、熊日が10日付朝刊で「デブリ取り出し本格化 遅れ」との図解記事を載せた程度だった。
熊日は熊本地震10年に注力
熊日は当然熊本地震10年の節目報道に力を入れている。連載企画を3回にわたって掲載しており、例えば「守るいのち つなぐ教訓」と題する第2部では、①避難所運営 環境改善、住民の「共助」で②車中泊避難 支援マニュアル策定 オンラインで健康状態把握も③心の被災 症状悪化で自殺も 精神医療継続へ連携④福祉避難所 地域で連携、一時受け入れを⑤在宅避難 拠点整備、顔見える関係カギ⑥外国人への対応 平時から備え、つながりを⑦病院の耐震化率、BCP(事業継続計画)上昇 応援受け入れも課題⑧仮設、復興住宅 社会の縮図 孤立させない支援を⑨どんな支援、制度が必要? 民間支援者、識者に聞く─という見出し。これらを見れば地震災害の時に留意しなければならない問題点が網羅されている。
意外にも読売が熱心で5回続きの「課題の現在地」を連載し、「避難者 アプリで把握/車中泊も網羅 支援くまなく」などと報じた。一方、朝日の紙面には熊本地震への執念が感じられなかった。
忘れてはならないウクライナ4周年
そう言えば2月24日は、ロシアによるウクライナ侵攻開始から4周年。各紙は23日付朝刊に一斉に報じた。共同通信はキーウの黒崎正也記者からで、和平交渉は膠着状態が続き、守勢に立つウクライナの窮状は深まっていると書いた。大型図解を見て意外性があったのが兵の死者数。ウクライナ側が最大推計14万人なのに対し、ロシア側は最大推計32万5千人という数字。ロシアは既に敗北している?
朝日新聞はキーウ駐在の藤原学思記者らが書いている。キーウにあった「トランプ」というカフェが最近、休業している話から始めて、零下20度のウクライナではエネルギー施設が標的になり「凍えるキーウ」となっているのに対し、ロシアでは水温28度のプールが湯煙を上げていると対照的な両国の現状を報告していて、その理不尽さを考えさせられる。
読売新聞はキーウ駐在の倉茂由美子記者によるもの。和平交渉が進んでおらず、ウクライナでの民間人死者が1万5千人を超えたとした。同日付では、①18歳、人生の岐路②露、戦争特需限界③長射程攻撃 応酬④偽りの祖国⑤子供 心身に傷⑥米、和平へ圧力⑦欧州 支援に差─とフルメニューの展開となっている。
このほか水俣病の公式確認から70年、代言人制度発足からの弁護士150年、らい予防法廃止から30年、普天間移転合意から30年、女性参政権80年もあった。周年報道があればこそ気付かされる問題がある。これからも担当記者の執念に期待したい。