編集長のひとこと
■巻頭には共同通信経済部の長尾寛副部長が「ホルムズ海峡封鎖の衝撃」と題して行った講演録を掲載しました。トランプ米大統領が始めたイラン攻撃で原油の流通が滞り、全世界が大混乱に陥りました。原油の9割以上を中東に依存している日本も経済への影響は甚大で、長期的なエネルギー戦略の再構築を迫られた背景を解説していただきました。米国、イランが覚書に署名し、ようやく事態収拾に動き始めましたが、トランプ氏が破棄したオバマ政権下の核合意からは大きく後退した印象で、共和党内からも批判が噴出しています。トランプ氏は自画自賛していますが、自己顕示欲にかられて始めた戦争にもかかわらず、インフレにおびえ、中間選挙をにらんで大幅譲歩を受け入れたとの指摘が支配的で、結局、何がしたかった戦争なのか疑問が拭えません。
■生成AIの進化がもたらす「正」と「負」の影響を巡って議論百出の状況です。そこで今月号にはメディア激動研究所が「これからのメディア~AI時代の報道」をテーマに行ったセミナーの概要をまとめました。AIの利便性が高まる中で、誤回答などによる事実の危機がもたらされる危険性もあり、AIは活用しながらも、「監視」する必要があるとの認識が示されました。その上で、AI時代を迎えメディアは人間にしかできない「現場取材」「価値判断」の追求が求められると総括しています。一方、元日経メディアラボ所長の坪田知己氏の2回目の論考では、生成AIの進化でメディアを取り巻く環境が激変する中で、既存のメディアは情報を「届ける」から人間が本来求めている信頼や共感など人と人を「つなぐ」役割を果たすことが求められると指摘する興味深い内容で、ぜひご一読ください。
■サッカーのW杯が大きな盛り上がりを見せていますが、その一方で国際サッカー連盟(FIFA)の金権体質が批判の的となっています。トランプ米大統領に平和賞を授与して世界をあぜんとさせたのが記憶に新しいですが、津山恵子氏の海外情報(米国)は、ファンや開催地の自治体を置き去りにしたまま、金もうけに血道をあげるFIFAの実態を描き出しています。放映権料の高騰や高額のチケット販売の方法など、今後の大会運営にも大きな課題を投げ掛けています。(一ノ瀬英喜)